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戦艦フロリダ   
         
         
   
(1911年戦艦フロリダ)   
         
 1911年アメリカ海軍の弩級戦艦の完成型と言うべき戦艦フロリダ、ユタの2隻が竣工します、フロリダ級の前級艦であるデラウェア級2番艦「ノースダコタ」において初の国産蒸気タービンを搭載したものの信頼性とぼしく航続距離がいじるしく低下、10ノットあたりでレシプロ式を搭載した戦艦デラウェアの60%~70%に留まりました、その為フロリダ級戦艦ではイギリス製のバーソンズ式直結タービンを採用し安定した航続距離、艦幅がデラウェアより増大しながらも最大速力21ノットを維持しています、元々アメリカ海軍の弩級艦はイギリス海軍と比較して兵装、装甲は互角、機関のみ劣っていたのでフロリダ級の完成によりアメリカ海軍は一応の世界基準の弩級戦艦を手にした事になります。   

 
         
戦艦フロリダの規模   
         
      
 戦艦フロリダは基準排水量21800t、全長158m、最大幅27mで基本、前級デラウェアを改造して一回り大きくしたコンセプトです、前に述べたタービン機関以外は特に大きな変更点はありません、その為デラウェアで問題視されていた中央3番砲塔弾薬庫がボイラーとタービンの間に位置している事から弾薬庫の温度が上昇し弾薬が変質する恐れがありましたが、その問題は解決される事はありませんでした。   
   

 
         
戦艦フロリダの兵装   
         
   
 戦艦フロリダの主砲は45口径30.5cm連装砲塔5基(10門)を艦中央に艦首から艦尾にかけて直線状に配置されています。この45口径30.5cmはサウスカロライナ級からの継続で大よそ400kmの砲弾を18000mまで届かせられ10920mの距離で254mmの装甲を貫通できたそうです。  
   
(艦首、背負い式連装主砲)   
         
 艦首主砲塔は背負い式に配置され艦尾においては最後尾の5番砲塔が後ろ向き配置、4番砲塔、3番砲塔は向かい合わせに3番砲塔が一段高い位置から後ろ向き、4番砲塔は3番砲塔と砲身が上下重なるように前向きに配置されています、この配置は艦全長を維持しながらもう1基砲塔を増やす為の工夫でこれもまたデラウェア級からの継続です。  
   
(艦尾の3番砲塔~5番砲塔)  (3番砲塔と4番砲塔)   
         
 この配置は艦首方向へ4門、艦尾方向へ4門(4番砲塔は側面のみ発砲可能)、弦側には全主砲10門が向けられます、しかし4番砲塔においては視界が悪くなる難点もありました。   
   
(弦側に向けられた主砲10門)   
         
 副砲は砲郭化された51口径12.7cm砲が両側面に8門づつ合計16門配備されデラウェア級より2門増やされています、12.7cm砲は対艦砲撃には非力で甲板上の構造物を破壊するのがやっとですが対駆逐艦の砲撃は十分な威力を発揮できます。   
   
(船体側面に配置された12.7cm砲)   

 
         
戦艦フロリダの艦歴   
         
 戦艦フロリダは1911年ニューヨーク海軍工廠で竣工され同年大西洋第一艦隊の旗艦となります。第一次世界大戦直前の1914年4月メキシコ革命の最中アメリカ軍はメキシコ湾の都市べラクルスを占領、戦艦フロリダは同市沿岸に待機停泊しています。
 1917年アメリカが第一次世界大戦に参戦するとフロリダはイギリス艦隊と合流の為にイギリス海軍拠点スカバーフローに入港しますがユトランド沖海戦以後ドイツ海軍の活動は徐々に沈静化しフロリダが艦隊戦に参加する事はありませんでした、その為、主な任務は北海、ノルウェー沖の監視と輸送船団の護衛でした。
 
   
 大戦終了後の1925年フロリダはボストン海軍造船所で近代改装が行われています、その改装により対水雷バルジの装着、ボイラーの変更、魚雷発射管の撤去、煙突1本の撤去が主になされました、特にボイラーを石炭、重油混合燃焼から重油燃焼に変更する事で最大出力を28000hpから47000hpまで向上させ最大速力22ノットに引き上げています、しかし1930年のロンドン軍縮条約でフロリダ級2隻は廃艦が決められフロリダは解体され戦艦ユタは砲撃訓練艦として使用された後に1941年12月真珠湾攻撃で沈没させられました。   

 
         
戦艦フロリダ(1911年)   
         
     兵装    
 基準排水量  21800t  45口径30,5cm連装砲塔  5基(10門)  
 全長  158m  51口径12,7cm砲 16門  
 最大幅  27m  53,3cm水中魚雷発射管  2基  
         
 機関  バーソンズ式高速、低速型直結タービン2組4軸  1909年3月起工    
 最大速力  21ノット  1910年5月進水    
 最大出力  16500hp  1911年9月就役    
     1932年解体    
 装甲厚        
 弦側  229mm~279mm      
 甲板  38mm~76mm      
 砲塔部  最大279mm      

 
         
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