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戦艦ネバダ   
         
         
   
 (戦艦ネバダ1916年)  
   
 1916年3月その後の戦艦建造に大きく影響を及ぼす新設計の戦艦ネバダが竣工します、艦の大きさは基準排水量27500t、全長177m、主砲35.6cm砲を三連装砲塔に収め重要箇所のみ防御する集中防御装甲により船体重量を抑えた画期的戦艦でした。   

 
         
船体重量を抑えた新設計   
         
   
 戦艦設計において最も重要なのはその攻撃力、防備、速力をバラス良く整える事です、攻撃力、装甲を強化すれば自ずと速力は低下、速力を重視すれば装甲は削らなければなりません、その問題に答えを出したのが戦艦ネバダの集中防御装甲です、集中防御装甲とは弾薬庫、機関室など重要部分を集中的に装甲強化し、さしも重要視されない箇所は装甲を削る、もしくは施さない事です、ネバダにおいては船底は三重構造、弦側水線部343mm、主砲塔前面は473mm(三連装砲塔)もの装甲が施され、更に格主砲塔の弾薬庫外側も装甲強化されています。これだけ防備を強化しながら装トン数は前級ニューヨーク級と略同じ27500tにおさえ最大速力も20.5ノットまで引き出せます。  
   
 戦艦ネバダはカーチス式直結蒸気タービンを搭載、2番艦オクラホマは4気筒レシプロ機関(往復機関)が搭載されています、これはいまだ信用に至らなかった国産蒸気タービンの性能を試す為に両艦異なる機関を搭載したのです、それにより結果は上々、ネバダは最大出力、巡航時の燃費共にオクラホマより優れていました。  

 
         
35.6cm三連装砲塔   
         
   
 戦艦ネバダの主砲45口径35.6cm砲は2基の三連装砲塔ともう2基の連装砲塔に収められています(合計10門)、艦首及び艦尾に三連装砲塔の背後に連増砲塔を背負い式に配置して艦中央を艦首から艦尾にかけて直線状に並べられています。   
   
 (艦首の砲塔配置)  (艦尾の砲塔配置)  
         
 もし10門の砲を5基の連装式砲塔に収めた場合、中央の三番砲塔は側面射撃のみ有効で前後の射撃は三番弾砲塔の2門が使用不可になり前後に向けられた4門づつの射撃となります、しかしネバダの砲塔は前後が三連装であり合計5門からの射撃が可能です。   
   
 側面射撃は連装砲塔5基配置したのと同じ10門からの射撃可能です。この35.6cm三連装砲塔はイタリアの弩級戦艦「ダンテ・アキリエーリ」の30.5sm三連装砲塔を手本にしたもので砲塔を1つ減らす事により装甲強化されたネバダの船体重量を軽くするのが目的でした。   
   

 
         
副砲   
         
   
 副砲は前級ニューヨーク級と同じ51口径12.7cm砲を両弦側に9門づつ、甲板に3門の合計21門を全て露天配置されています。この12.7cm砲は速射砲に分類され1分間に9発前後の射撃が可能であり、側面射撃においては11門が向けられる為に1分あたり大よそ99発の砲弾が発砲できます、対駆逐艦射撃には十分な装備です(露天配置なのが少し不安要素ですが)。   

 
         
戦艦ネバダの艦歴   
         
 第一次大戦最中の1916年3月戦艦ネバダが完成、続いて2ヵ月後の5月には姉妹艦オクラホマも完成します、就役後両艦は大西洋艦隊に所属しアメリカが大戦に参戦すると共に大西洋の輸送船団の護衛に従事しています。終戦後の1927年両艦は近代改装が行われネバダにおいては主砲仰角の引き上げ、籠状マストから3脚マストへの変換、水上機用のカタパルトの設置、老朽化した機関を戦艦ノースダコタの物と交換(イギリス製バーソンズ式タービン)、が主な改装点です。
 太平洋戦争勃発時の1941年12月両艦は真珠湾に停泊中で日本軍の爆撃、魚雷攻撃を受けます、オクラホマは転覆しその後廃艦とされます、ネバダはなんとか浅瀬に乗り上げ沈没を免れてハワイ海軍工廠で応急処置をした後に本国ビュージェットサウンド海軍造船所で本格修理が行われました。ネバダ級の集中防御装甲は装甲が非常に薄い箇所があり、そこが弱点であったようです。ネバダは修復した後、更なる近代改装がなされ主砲を1933年型の45口径35,6cm砲と交換、副砲を1934年型38口径12.7cm砲に変えられています、この1933年型35,6cm砲は非常い高性能な砲で680kgの砲弾を最大31000mまで飛ばせ距離10500mで457mmの装甲が貫通できたそうです。また対空防備も強化されボフォース40mm4連装機関砲10基、20mm連装機関砲を20基、単装砲5基が搭載されました。
 修復後ネバダは大西洋、太平洋で上陸支援砲撃などに参加しています、ノルマンディー上陸作戦、硫黄島では艦砲射撃を行い1944年8月~9月に掛けて南フランスでは設置してある海岸砲と砲撃戦を展開しています。
 大戦終了後ネバダはビキニ環礁沖で原爆実験の標的になりますが沈没する事はありませんでした、1948年にハワイ沖で再度標的艦とされ砲撃、魚雷により沈没処分されています。 
 

 
   
 戦艦ネバダ1916年  
         
 基準排水量  27500t  兵装    
 全長  177m  45口径35.6cm三連装砲塔  2基(6門)  
 最大幅  29m  45口径35.6cm連装砲塔  2基4門  
     51口径12.7cm砲  21門  
 機関  ブラウン・カーチス式直結タービン2基2軸  50口径76,2cm高射砲  4門  
 最大速力  20.5ノット  12,7mm対空機銃  6門  
 最大出力  27000hp  53,3cm魚雷発射管  2基  
         
 装甲厚    1912年11月起工    
 弦側水線部  343mm  1914年7月浸水    
 甲板部  最大76mm  1916年3月就役    
 三連装砲塔部  前面476mm  1946年8月退役    
 バーベット部  330mm      

 
         
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