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巡洋戦艦フッド   
         
         
   
         
 第一次大戦においてイギリスは主力戦艦の数で敵国ドイツを上回っていましたが高速性に優れた巡洋戦艦ではドイツ海軍が秀でていました、更にドイツは35cm砲8門を搭載した巡洋戦艦マッケンゼン級4隻と38cm砲8門搭載した巡洋戦艦ヨルク級3隻の建造を計画します、それに対抗すべくイギリスは38cm砲8門搭載した巡洋戦艦アドミラル級(巡洋戦艦フッド)4隻の建造を計画します、しかし1916年5月31日のユトランド沖海戦で装甲の弱いイギリス巡洋戦艦は次々大破、撃沈され巡洋戦艦の弱点が露呈される事となります、そこでイギリスは巡洋戦艦フッドの建造を一旦中止して計画の大幅変更を行います、当初排水量36000t、装甲厚弦側水線部203mm、甲板部76mm、最大速力32ノットでしたが弦側水線部を305mm、水平装甲127mmとしました、それにより船体重量も41125tと増加、当時の主力戦艦の規模を上回る世界最大級の戦艦となったのです、また速力は最大32ノットを維持、建造時には規模、推進力、攻撃力共に世界最強となり国民から「マイティー・フッド」と称されました、しかしフッドの建造期間中に敵国ドイツは戦況悪化の為にマッケンゼン級の計画を中止、その為イギリスもフッド以外のアドミラル級の建造を中止とします。  

 
         
巡洋戦艦フッドの規模、装甲、機関   
         
   
 巡洋戦艦フッドの基準排水量は41125tと1940年にドイツの戦艦ビスマルクが登場するまで世界最大規模の軍艦でした、全長は262m、最大幅28.9mで大変スリムな船体となっています。   
   
 ボイラーをヤーロー式水管缶の採用により前級42基に対して24基まで削減、機関を新型のギヤードタービンとして最大151000hpまで発揮できます、細身の船体に新型機関搭載で最大速力は巡洋艦並みの32ノットまで引き出す事が可能です。   
   
 装甲も主力戦艦並みの弦側水線部305mmで巡洋艦並みの速力と主力戦艦並みの防御性、攻撃力を兼備えた世界最大規模の戦艦としてイギリス国民のフッド対する期待は大変大きなものでした、しかし問題が1つあります、それは弦側装甲で装甲厚305mmと言えども実際に施されている箇所は艦首1番砲塔から艦尾4番砲塔間の170m、その高さはわずか5mでした、速力重視の為に装甲箇所が重要箇所のみに限定されています、これが後々フッドに悲劇をもとらす事となるのです。   

 
         
巡洋戦艦フッドの主砲及び副砲   
         
   
(艦首側の42口径38.1cm連装砲塔2基、4門)   (艦尾側の42口径38.1cm連装砲塔2基、4門)   
         
 主砲は前級のレナウン級と同じ42口径38.1cm砲で連装砲塔に収め艦首と艦尾に2基づつ背負い式に配置(合計8門)、艦首、艦尾に4門づつ、両弦側には全砲の8門が向けられます、この42口径38.1cm砲はフッドの設計段階においては世界最大級の艦載砲でした。   
   
(左舷方向へ向けられた主砲8門)   
         
 副砲は対駆逐艦用の50口径14cm砲を片弦側甲板上に6門の計12門を装備、駆逐艦の規模拡大に伴い前級まで採用されていた45口径10.5cm砲を廃してより強力な14cm砲としたのです。   
   
(左舷側の50口径14cm砲6門)   
         
 艦尾甲板楼上には対空砲として50口径10.2cm砲4門を装備、更に対空兵装である2ポンド8連装ポンポン砲3基と12.7mm4連装機関砲4基が後年追加されています。   
   
(艦尾甲板楼上に配備された50口径10.2cm対空砲4門)   

 
         
巡洋戦艦フッドの最後   
         
 巡洋戦艦フッドの就役は第一次大戦終結後の1920年5月でした、1922年のワシントン軍縮会議では主力戦艦の最大規模は35000t以下と定められましたがそれを超えるフッドにおいては既に完成していた事もあり特例としてその存続が認められています。 
 1931年にフッドは小規模改装がなされカタパルトと2ポンド8連装ポンポンが追加され1940年には副砲、対空砲が撤去され20連装ロケット砲5基が装備されました、更にこの時レーダー及びコンピューターシステムも装備されています。
 
   
  第二次大戦が勃発するとフッドは艦隊を率いて船団護衛に従事します、そして1941年5月24日フッドは運命の時を向かえるのです。敵国ドイツはフッドの規模を超える41700tの戦艦ビスマルクを完成させます、これはイギリスの輸送船団にとって非常に脅威となります、そこでイギリス海軍はフッド及び完成直後の戦艦プリンスオブウェールズをビスマルク迎撃に派遣、5月24日にデンマーク沖で戦艦ビスマルクとその護衛である巡洋艦ブリンツオイゲンに遭遇、戦闘が開始されます、しかし戦闘開始からわづか6分後にビスマルクによる一斉射撃の直撃弾を受けフッドは弾薬庫が誘爆し海中へ没しました、装甲箇所を限定した事がこの時にあだとなったのです、イギリス国民から大きな期待を寄せられていた巡洋戦艦フッドのあっけない最後に国民は衝撃を受ける事となります、またプリンスオブウェールズもこの時大破、その後のイギリス海軍の奮闘により戦艦ビスマルクを要約撃沈する事ができました。  

 
         
巡洋戦艦フッド   
         
 基準排水量  41125t  兵装(就役時)  
 全長  262m  42口径38.1cm連装砲塔  4基(8門)
 最大幅  28.9m  50口径14cm砲  12門
     50口径10.2cm対空砲  4門
 機関  ブラウンカーチスギヤードタービン4基4軸推進  53.3cm水上魚雷発射管  4基
 最大速力  31ノット  53.3cm水中魚雷発射管  2基
 最大出力  151280hp    
     1916年9月起工  
 装甲厚    1918年2月進水  
 弦側水線部  最大305mm  1920年5月就役  
 甲板水平部  127mm  1941年5月24日沈没  
 砲塔部  前面381mm    
 
         
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