近代の軍艦史  軍事、兵器  イギリス海軍  TOPページ  
         
         
(初代)キングジョージ5世級戦艦   
         
         
   
         
 今回は1912年に就役した(初代)キングジョージ5世級戦艦について書いてみました、第二次大戦中の1940年に就役した「戦艦プリンス・オブ・ウェールズ」の同型艦「戦艦キングジョージ5世」とは異なります。
 1912年~13年に就役したキングジョージ5世級戦艦の「キングジョージ5世」、「センチェリオン」、「エイジャックス」、「オーディシャス」の4隻はイギリスが同年1月に就役させた世界初の超ド級戦艦「オライオン級」に次ぐ第二段です、その建造によりイギリス海軍はオライオン級4隻と合わせて一気に8隻もの超ド級戦艦を保有する事となります、キングジョージ5世が就役した1912年にはイギリス以外の海軍保有国は口径34.3cm砲以上の主砲を搭載した超ド級戦艦を保有していませんでした。 
 

 
         
キングジョージ5世の規模、装甲、機関   
         
   
 キングジョージ5世の規模は基準排水量23000t、全長182m、最大幅27mと前級オライオンよりいささか前後に長い船体と成っています。   
   
 装甲は絃側水線部で203mm~305mm、甲板部で25mm、主砲塔全面で279mm、船体内の傾斜装甲が102mmでした、更に駆逐艦、潜水艦による魚雷攻撃に配慮して船体水線部下の隔壁には鋼板が張られていました、しかしこの防護隔壁じたい弾薬庫、機械室のみに施されていて4番艦オーディシャスが1914年10月、ボイラー室側面に機雷がふれ浸水が止まらず沈没に至っています。   
   
 機関は石炭、重油の混焼ボイラー18基で2基のタービンを発動させ4軸のスクリューを回転させます、それにより最大出力31000hp、最大速力21ノットを発揮させられました。   

 
         
 主砲45口径34.5cm砲   
         
   
 (艦首甲板上の34.3cm連装砲塔2基)  
 主砲はオライオン級に引き続き45口径34.3cm砲を採用、此れを連装砲塔に収め艦首甲板上に背負い式配置で2基、船体中砲甲板上に1基、艦尾甲板上に背負い式配置で2基の合計5基10門配備しています。   
 
(船体中央甲板上の34.3cm連装砲塔1基)  ( 艦尾甲板上の34.3cm連装砲塔2基)  
         
 主砲の配置も数もオライオン級と同じですが砲塔の改良により567kgの砲弾(オライオン級)よりも重量の思い635kgの砲弾を発射する事が可能になりました、この635kg弾は射程距離が21710mで567kg弾と略同じですが9144mの距離から318mmの装甲を貫通する事ができる優れ物でした、発射速度は毎分1.5発です。   
   
(左舷側に向けられた45口径34.3cm砲10門)   

 
         
副砲40口径10.2cm砲   
         
 
 (左舷艦首甲板構造物側面の10.2cm砲4門)  (左舷艦尾甲板構造物側面の10.2cm砲2門)  
         
 副砲もオライオン級から継続され40口径10.2cmです、此れを左舷と右舷の甲板上の構造物側面に砲郭に収め6門づつと艦首船体側面に左右に2門づつで片側8門の合計16門配備しています、本来対駆逐艦用の速射砲ですが駆逐艦の大型化と性能向上によりこの時代口径15.2cm以上の速射砲が必要でした、10.2cm砲では対駆逐艦砲として今一つ非力でした。最大射程は8789m、発射速度は毎分10発です。  
   
 (左舷艦首船体側面の10.2cm砲2門)  

 
         
戦艦キングジョージ5世級の艦歴   
         
 1912年11月に1番艦キングジョージ5世が就役、翌13年には2.3.4番艦の「センチェリオン」、「エイジャックス」、「オーディシャス」が就役しています、就役後4隻ともイギリス本国艦隊に所属しキングジョージ5世は本国艦隊の旗艦となります(第一次大戦後に次級アイアンデュークと交代)、1914年7月28日に第一次大戦が勃発するとキングジョージ級4隻はグランドフリート(イギリス本国艦隊と大西洋艦隊の統合艦隊)へ編入されました、しかし大戦勃発後の1914年10月に上記で述べた通り4番艦のオーディシャスが北アイルランドのスウィリー湾で機雷に触れて浸水、一度は救済を試みましたが浸水が早く天候も悪化して曳航が不可能となり沈没を余儀なくされました。  
   
(触雷する4番艦オーディシャス)   
         
 1916年5月31日、第一次世界大戦最大の海戦であるユトランド沖海戦へ3艦は参戦しましたがドイツ艦隊との位置関係が悪くあまり大きな戦果をあげる事はできませんでしたが一応キングジョージ5世が9発、センチェリオンが19発、エイジャックスが6発の主砲弾を発射しています。   
   
(ユトランド沖海戦で主砲弾を発射するキングジョージ5世級3隻)   
         
 第一次大戦終結後3隻は地中艦隊に編入されました、その後ワシントン海軍軍縮条約により破棄が決定されキングジョージ5世とエイジャックスが除籍、センチェリオンにおいては武装、装甲が撤去され標的艦となり1944年6月9日のノルマンディー上陸作戦において上陸時の防波堤として沈められています。   

 
         
戦艦キングジョージ5世   
         
 基準排水量  23000t  兵装  
 全長  182.1m  45口径35,3cm連装砲塔  5基10門
 最大幅  27.1m  40口径10.2cm砲  16門
     47mm単装砲  4門
 機関  石炭、重油混焼ボイラー18基、直結タービン2基4軸推進  53.3cm水中魚雷発射管  3基
 最大出力  31000hp    
 最大速力  21ノット  1911年1月起工(キングジョージ5世)  
     同年10月進水  
 装甲厚    1912年11月就役  
 絃側水線部  203mm~305mm  1926年12月除籍  
 甲板部  25mm    
 船体内傾斜装甲  102mm    
 主砲塔全面  279mm    
 

 
         
 近代の軍艦史  軍事、兵器  イギリス海軍  TOPページ