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(海戦開始)
 ユトランド沖海戦3
(海戦終結)
         
         
ユトランド沖海戦1   
(海戦に至るまで)   
         
         
   
 第一次大戦勃発後ドイツ海軍は数で圧倒するイギリス海軍との直接的艦隊決戦をさけていました、その為主な海上での戦いは潜水艦による通商破壊でした、しかしその通商破壊作戦は無差別的で時にはアメリカなどの中立国の国民が乗船する船舶なども攻撃する状況であったのです、それにより中立国が連合国側について参戦する恐れが高まりドイツ帝国は潜水艦による通商破壊作戦を一時中断しイギリス海軍の中小艦隊を誘い出し撃滅する作戦へ転換したのでした。   

 
         
海戦前のイギリス、ドイツ両国艦隊の状況   
         
 第一次大戦中イギリス海軍はスコットランド北部のスカパフロー湾を拠点とする「サー・ジョン・ジェリコー提督」指揮下の大艦隊「グランドフリート」とフォース湾奥の港湾都市ロサイスを拠点とする「デビット・ビーティー提督」指揮下の巡洋戦艦部隊に分かれて配置されていました、それに対するドイツ海軍は「ラインハント・シェア提督」指揮下の大洋艦隊(ドイツ主力艦隊)をヤーデ湾のビィルムヘルムスハーフェンに配置していたのです。当初イギリス海軍もドイツ海軍との艦隊決戦には消極的で北海北側を大艦隊により封鎖、更にドーバー海峡を機雷源により封鎖しドイツ艦船の封じ込め作戦を展開していました、その為ドイツ帝国は海上からの物資輸送が困難となります、そこでドイツ海軍はイギリスの封鎖作戦に対抗すべく潜水艦の魚雷攻撃によりイギリス輸送船団への攻撃を開始します、しかしこの潜水艦による攻撃は無差別的で1915年5月7日アメリカ民間人の乗船したイギリス船籍「ルシタニア号」を撃沈してしまいます、この無差別攻撃に当時中立国であったアメリカは激怒、アメリカの参戦を恐れたドイツ帝国は潜水艦による魚雷攻撃を一時中断しイギリスとの艦隊決戦を思考するになったのです。  
1915年当時の北海   

 
         
両艦隊の出撃   
         
 ドイツ大洋艦隊総司令官シェア提督は高速性能に優れた巡洋戦艦によりイギリス本国の港であるサンダーランドを攻撃させ敵艦隊を引きずり出し大洋艦隊により撃滅させる計画を立てます、しかしこの作戦は悪天候により中止され、かわってデンマーク(ユトランド半島)とノルウェー(スカンディナビア半島)の間に位置するスカゲラック海峡に向けて1915年5月30日に艦隊を出撃させました。このドイツ海軍の動きは暗号を既に解読していたイギリスの知るところでジェリコー提督は5月31日午前0時までに大艦隊と巡洋戦艦部隊をスカゲラック海峡に向けて移動させています。   

 
         
両艦隊の遭遇   
         
 ジェリコー提督の大艦隊はビーティー提督の巡洋戦艦部隊を先行させる形でスカゲラック海峡を進行、同じ頃シュア提督率いるドイツ大洋艦隊も巡洋戦艦を主力とした「フランツ・フォン・ヒッパー提督」指揮下の偵察部隊を先行させ北上していました、5月31日14時過ぎイギリス巡洋戦艦部隊の軽巡洋艦ガラティアがドイツ偵察部隊の軽巡洋艦エルピンクを発見、双方お互いの存在を本隊へ打電すると砲撃戦を開始、ここに第一次大戦最大の艦隊戦であるユトランド沖海戦が開始されたのでした。   
   
(砲撃戦を展開するイギリス巡洋戦艦部隊ガラティアとドイツ偵察部隊エルピンク)   

 
         
ユトランド沖海戦に参戦したイギリス艦隊とドイツ艦隊の戦力比較   
         
 ここでユトランド沖海戦に参戦した両艦隊の戦力を比較してみましょう。   
 イギリス海軍 
 (大艦隊)  
 艦隊旗艦      
 アイアンデュ―ク(アイアンデュ―ク級超弩級戦艦    
       
第四戦艦戦隊 、第四戦艦隊   
 ベンボウ(アイアンデュ―ク級超弩級戦艦  ベレロフォン(ベレロフォン級弩級戦艦  テメレーア(ベレロフォン級弩級戦艦
   
 ヴァンガード(セントヴィンセント級弩級戦艦    
       
 第四戦艦戦隊 、第三戦艦隊    
 シュバーブ(ベレロフォン級弩級戦艦  ロイアルウォ―ク(リヴェンジ級超弩級戦艦  カナダ(カナダ級超弩級戦艦
       
  第一戦艦戦隊、第六戦艦隊   
 マーバラ(アイアンデュ―ク級超弩級戦艦  リヴェンジ(リヴェンジ級超弩級戦艦  ハーキュリーズ(コロッサス級弩級戦艦
   
 エジンコート(エジンコート級弩級戦艦    
       
 第一戦艦戦隊、第五戦艦隊   
 コロッサス(コロッサス級弩級戦艦  コリンウッド(セントヴィンセント級弩級戦艦  ネプチューン(ネプチューン級弩級戦艦
   
 セントヴィンセント(セントヴィンセント級弩級戦艦    
       
 第二戦艦戦隊、第一戦艦隊   
 キングジョージ5世(キングジョージ5世級超弩級戦艦  エイジャックス(キングジョージ5世級超弩級戦艦  センチェリオン(キングジョージ5世級超弩級戦艦
   
 エリン(エリン級超弩級戦艦    
       
 第二戦艦戦隊、第二戦艦隊   
 オライオン(オライオン級超弩級戦艦  モナーク(オライオン級超弩級戦艦  コンカラー(オライオン級超弩級戦艦
   
 サンダラー(オライオン級超弩級戦艦    
       
  第三巡洋戦艦戦隊      
 インヴィンシブル(インヴィンシブル級巡洋戦艦)   インフレキシブル(インヴィンシブル級巡洋戦艦)   インドミタブル(インヴィンシブル級巡洋戦艦) 
 (巡洋戦艦部隊)   
 艦隊旗艦     
 ライオン(ライオン級巡洋戦艦    
       
 第一巡洋戦艦戦隊   
 プリンセス・ロイヤル(ライオン級巡洋戦艦  クイーンメリー(ライオン級巡洋戦艦  タイガー(タイガー級巡洋戦艦
       
 第二巡洋戦艦戦隊     
 ニュージーランド(インディファディガブル級巡洋戦艦  インディファディガブル(インディファディガブル級巡洋戦艦  
       
 第五戦艦戦隊       
 バーラム(クイーンエリザベス級超弩級戦艦  ウォースバイト(クイーンエリザベス級超弩級戦艦  ヴァリアント(クイーンエリザベス級超弩級戦艦
     
 マレーヤ(クイーンエリザベス級超弩級戦艦    
       
 その他  装甲巡洋艦8隻  軽巡洋艦26隻  駆逐艦78隻
 
         
 ドイツ海軍   
 (大洋艦隊)戦艦部隊   
 艦隊旗艦    
 フリードリヒ・デア・クローゼ(カイザー級弩級戦艦    
       
 第三戦隊、第五戦艦隊   
 ケーニヒ(ケーニヒ級弩級戦艦  グロザー・クル・フュルスト(ケーニヒ級弩級戦艦  マルクグラーフ(ケーニヒ級弩級戦艦
   
 クローンプリンツ・ヴュルヘルム(ケーニヒ級弩級戦艦    
       
 第三戦隊、第六戦艦隊 
 カイザー(カイザー級弩級戦艦  プリンツ・レゲント・ルイトポルト(カイザー級弩級戦艦  カイザリン(カイザー級弩級戦艦
       
 第一戦隊、第一戦艦隊   
 オストフリースライト(ヘルゴラント級弩級戦艦  チューリンゲン(ヘルゴラント級弩級戦艦  ヘルゴラント(ヘルゴラント級弩級戦艦
   
 オンデンブルク(ヘルゴラント級弩級戦艦    
       
 第一戦隊、第二戦艦隊   
 ポーゼン(ナッサウ級弩級戦艦  ラインラント(ナッサウ級弩級戦艦  ナッサウ(ナッサウ級弩級戦艦
   
ヴェストファーレン(ナッサウ級弩級戦艦    
       
 (大洋艦隊)偵察艦隊      
 第一偵察艦群   
 リッツオー(デアフリンガ―級巡洋戦艦  デアフリンガ―(デアフリンガ―級巡洋戦艦  サイドリッツ(サイドリッツ級巡洋戦艦
 
 モルトケ(モルトケ級巡洋戦艦  フォン・デア・ターン(フォン・デア・ターン級巡洋戦艦  
       
 その他  前弩級戦艦(旧式主力戦艦)6隻  軽巡洋艦11隻  水雷艇61隻
 
         
 数ではイギリス艦隊がドイツ艦隊を主力艦、補助艦艇共に圧倒しています、更にイギリス海軍は口径34.3cm以上の主砲を多数搭載した超弩級戦艦を14隻も参戦させています(プラス口径30.5cm主砲搭載の弩級戦艦も14隻)、それに対するドイツ艦隊は口径30.5cm砲を主砲とする弩級戦艦16隻と旧式戦艦6隻です、イギリス艦隊がドイツ艦隊より有利と思われますがユトランド沖海戦で最も活躍した艦艇は足の速い巡洋戦艦です、イギリス艦隊はこの巡洋戦艦に問題がありました、イギリス海軍は世界初の弩級戦艦ドレッドノート の建造に着手したイギリス海軍第一海軍本部長ジョン・アーバンスノット・フィッシャー卿の持論である「速度こそ最大の防御」に基づいて巡洋戦艦を多数建造しました、このイギリスの巡洋戦艦は速力に特化しています、特にライオン級以降に建造された巡洋戦艦は超弩級戦艦に匹敵する口径34.3cm主砲を8門搭載するなど攻撃力にも秀でています(ドイツ海軍の巡洋戦艦は口径30.5cmまで)、しかしイギリス海軍の巡洋戦艦は速力、攻撃力を強化する反面、防御面の装甲を削っていたのです、それ故にユトランド沖海戦でのイギリス巡洋戦艦は大きな打撃を被る事となるのです。  

 
         
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